在日米海軍司令官
ジェームズ・ケリー 殿
2006年8月29日
非核市民宣言運動・ヨコスカ
ヨコスカ平和船団
すべての基地に「NO!」を・ファイト神奈川
連絡先 横須賀市本町3-14 山本ビル2F
TEL / FAX 0468-25-0157
横須賀基地の攻撃能力を増強する
イージス巡洋艦シャイロの配備に抗議します
本日、8月29日、横須賀基地にイージス艦シャイロ(CG-67
1992年就役)が配備され
ま
した。最新のスタンダードミサイルSM-3を搭載し、弾道ミサイルの迎撃能力をもつ軍
艦であり、横須賀基地のミサイル防衛能力が強化されると宣伝されています。
しかし、私たちはシャイロが、ミサイル防衛のみを目的とする軍艦ではないことを
知っています。120発のミサイルが収納可能なVLS=垂直発射装置を持つシャイロは、
多数の巡航ミサイル・トマホークを搭載した、極めて高い攻撃能力をもった軍艦であ
ります。トマホークはここ数年格段の「進歩」を遂げ、2004年から配備が開始された
タクティカル・トマホークは従来の1250kmの射程距離を3000kmに延伸しています(フ
リー百科事典Wikipediaより)。
横須賀基地から、朝鮮半島全域は言うに及ばず、中国、ロシアの相当な地域をその射
程に収める能力をもっているのです。ケリー司令官、アメリカ海軍は、シャイロがど
のようなトマホークを搭載しているのか、その攻撃能力について一言も明らかにして
いません。
横須賀基地には去る７月のイージス駆逐艦マスティン(DDG-89
2003年就役)の配備
に
伴い、８月16日にフリゲート艦バンデクリフトがアメリカに帰国し、横須賀基地は
イージス巡洋艦3、同駆逐艦6、フリゲート艦1となり、搭載可能なミサイルの数は過
去最大となりました。本日現在、イージス艦のVLSは実に912セルを数えます。これだ
けのミサイルをもつ海軍基地が、横須賀のほかに東アジアのいったいどこにあるであ
りましょうか。ケリー司令官が、私たちよりもよくご存知のはずです。
空母キティーホークが「動く航空基地」であるように、イージス艦はミサイル防衛
よりも、動く「ミサイル基地」として運用されてきました。それは、2003年のイラク
戦争において開戦冒頭にイラク領内に最初のトマホーク攻撃を行ったのが、横須賀に
配備されているイージス巡洋艦カウペンスであったことが、何よりもよく証明してい
ます。
横須賀基地の増強は、東アジアの軍事的な緊張を激化させずにはおかないでしょ
う。
すでに中国も、イージス艦「蘭州」を2004年に、同「海口」を2005年に就役させ、ア
メリカ海軍と海上自衛隊に対抗する姿勢を鮮明にしています。韓国も海上自衛隊の
「おおすみ」を一回り上回る大きさの強襲揚陸艦「独島」と、スタンダードミサイル
を32発搭載する駆逐艦「李瞬臣」を2005年に就役させました。さらに三隻のイージス
艦を建造する計画を発表しています。
私たちは、東アジアにおける軍拡競争・建艦競争のはじまりを憂慮します。同時
に、
さる7月5日の北朝鮮のミサイル発射実験に、強く抗議するものです。クリントン政権
の国防長官であったペリーさんは、「必要ならば潜水艦からミサイルを発射して破壊
してしまえ」とワシントン・ポスト紙に書きました。しかし、圧倒的な軍事力を行使
すれば、北朝鮮の行動を押さえ込めるとする発想は、根本的に誤っていると指摘せざ
るをえません。
対話による解決も決して容易ではないことを私たちは知っています。しかし、対話
は死者を生まず、憎しみの連鎖を作り出すことがないために、もっとも有効な方法で
あると私たちは確信しています。
去る6月、グアム島周辺海域に、横須賀を母港とする空母キティホーク、5月に佐世
保に帰港した原子力空母リンカーンなど三つの空母戦闘群を中心に、B2戦略爆撃機、
嘉手納のF15戦闘機、三沢のF16戦闘攻撃機と在日米海軍・空軍を集結させた大規模な
軍事演習「ヴァリアント・シールド」を繰り広げました。アジアのどの国も遠く及ば
ない、まさに圧倒的な軍事力の展開でした。
しかし、どんなに強力な兵器をもっても、自らの思うがままの世界秩序を形成する
ことはできません。イラク戦争は４年目に入っていますが、戦争の終結もアメリカ軍
の撤退の目途も立たないのは何故でしょうか。
この８月だけでも51名のアメリカ軍兵士が命を落とし(8月27日現在)、累計戦死者
は2628人にも達していることを、ケリー司令官はどうお考えでしょうか。ワシントン
・ポストに日々掲載される若い兵士の写真を、あなたはどのような思いで見ているで
しょうか。
あなたたちは、今日もイラクで戦争を続け、イラクの人々を殺傷し続けています。
イラクの人々の死者は開戦以来4万人とも10万人とも言われています。戦費の増大は
アメリカ経済を失速させはじめています。一日も早くイラクから撤退し、先制攻撃
戦略を放棄することこそ、イラクに平和を回復する一番の早道ではないでしょうか。
アーミテージ前国務副長官は、「日本もトマホークを導入してはどうか」と言い出
しました。そして、あなたたちは、イージス艦に加えて、攻撃能力の高い原子力空母
を2008年に、この横須賀基地に配備しようとしています。
私たちは、かつての戦争でアジアで1000万人ともいわれる人々を殺害し、自国の軍
隊・市民にも300万人もの死者を出した悲惨な歴史をもつ国の市民として、横須賀基
地の増強と原子力空母の配備に、反対し続けることを、表明するものです。